Tenementをオープンして1年経った2003年の夏ごろ
小西康陽さんがふらりとお店に訪れてくれました。
その日の事は今でも鮮明に覚えていますが、
それはまた別の機会にでも。
その当時から定期的にうちのお店で、
小西さんのプライベートな選曲によるイベントが
開催されるようになりました。
イベントには小西さんを慕って来る耳の肥えた
音楽愛好家たちが数多く集い音楽的水準の高い
内容のイベントだったと言っても、言い過ぎで
はないように思います。
イベント以外の日にも、頻繁に小西さんと酒の
瓶を空け今思えばご迷惑な相談もさせてもらっ
ていた気がしてならない。
ある冬の日のこと、恵比寿の蕎麦屋に行って
ウチのレーベル名を考えてほしいと持ちかけた
ことも。食事をしながらペンを片手に、
メモ用紙に走り書きしたあと『これはどう?』と
笑いながら見せてくれたのが
"innocent record"という名前だった。
“イノサン”をフランス語で言うと"イノセント"。
つまり“イノサンレコード”という小西さんの
洒落からレーベル名が誕生。
奥様の千彩さんからも、はじめてレコードを制作
する際、書類の書き方ひとつも分からない自分達
に必要なノウハウを教わったりも。
自分に才能というものがあるとすれば、それを誰
よりも早く見い出してくれた存在。
当時、お店を切り盛りしつつ音楽制作をしていた
自分を見下す輩も多い中、チャンスを頂いたり励
ましてもらったりもしたなぁ。
にも関わらず、俺のおかげなどと微塵もみせない
品格に脱帽する。
そう、この出会いがなかったら今の自分はいなか
った。
三島由紀夫が文中でこんな事を言っていたのを
思い出します。
『本当の友人というものは自分が辛い時や困って
いる時にそっと傍にいて、もう大丈夫だなと思っ
たらそっと姿を消す。』
身勝手な思い込みかもしれませんが、感謝して
います。そして、本の出版おめでとうございます。
「ぼくは散歩と雑学が好きだった。」

昨日発売。写真は信藤三雄さん。